この郷愁は不安の裏返しなのか? (2003.6.14)

東急文化会館が閉館する。
と言っても、僕が、かつては渋谷という街のシンボルだったかもしれないその建物に、足を踏み入れた事など、実際のところ数えるほどしかないのだけれど、それでもどこか寂しい気がしてくるのは何故だろう?

東急文化会館といえば、やはり五島プラネタリウムだ。
閉館から、早二年が経過しても、東急文化会館と五島プラネタリウムはセットなのだ。

プラネタリウムといえば、デート。
デートには欠かせないロマンティックな空気が、プラネタリウムには何故かあった。
恐らく、プラネタリウム= 星=ロマンティックという程度の基本方程式だったのだろうが、女の子をプラネタリウムに誘うなんて考えただけでドキドキする。
しかも会場は暗くて、並んで座るシートは仰向け。
夏の大三角形と冬の大三角形も分からないような、教養皆無の僕にしてみれば、大切なのは、ただただこのシチュエーションだけ。
女の子と並んで暗がりに横たわるなんて、それだけで血液が一点に集中してしまう。
いやぁ、若かったなぁ。

と言って、この東急文化会館の閉館のニュースが、ただ僕の若かりし時代への郷愁を誘うだけなのかというと、そうでもない。
『文化会館』とか『プラネタリウム』って、なんとも昭和な香りがする。
ココ最近、昭和あるいはそれを大きく飛び越えて江戸時代への憧れみたいなものが、マスメディアを通 じて盛んに煽られてはいないか。
それは、現代という、なんだか先の見えない不安に追い立てられている僕らが、一時心を休めるためにそこにある蜃気楼のようなものと、実は深い関わりがあるような気がしてならない。
つまり、明日は今日よりもっと幸せになれるという確信が、例え根拠なんて無くっても僕らには必要で、そんな風に夢を見ることが難しくなってしまったとき、僕らは思い出や幻想の中に安らぎを求め始めるんじゃないか。
「24時間戦えますか?」なんて栄養ドリンク飲んでたハズが、気が付いたら猫も杓子も時代は『癒し』だ。
癒し系アイドルだけじゃない。
今やフードルだって、AV嬢だって、週刊誌を捲れば『癒し系』の叩き売り状態。
そんな風に疲れ切った僕たちは、未来から目を逸らして過去へ逃げ込む。
そのための『昭和』。
そのための『江戸時代』。

とはいえ、思い出すだけで何とも甘酸っぱい気持ちになってしまう五島プラネタリウム。
その五島プラネタリウムが、東急文化会館の閉館キャンペーン『meet』で復活している。
文化会館閉館までの期間限定だけれど、あの照明を落とした会場でドキドキしている若いカップルがいるのかなぁ、なんて想像してみると、何故だか嬉しくなってくる。
なんて書くと変態中年オヤジの戯れ言みたいだけれど、いやホントにいいもんですよ、梅雨時のプラネタリウムも。

東急文化会館 閉館キャンペーン『meet』


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