夢をみた話

日々

うたた寝していたら夢をみた。

幼い僕は同じくらいの年齢の、多分ロシア人の子どもと二人で土ぼこりが酷い黄色い地面の広場で遊んでいる。追いかけっこをしたり、二人で口笛を吹いたり。クリーム色の肌の体毛のない大きなイヌがいて、イヌはロシア人の子どもによく懐いていた。

ロシア人の子どもに手招きされて大きなタープの下に入った。タープは真新しくて所々透き通って太陽の光を感じた。僕の口笛が掠れると、ロシア人の子どもはクスクスと小さく笑った。僕も同じように笑った。

体毛のない大きなイヌがタープの下から立ち去ると、入れ替わりに勲章をつけた深緑色の軍服を着た背の高い男の人が現れた。

ロシア人の子どもは、その男の人に抱き抱えられて、嬉しそうに何か話している。男の人の目は緑がかった灰色で、肌の色は真っ白だった。

男の人がポケットから取り出した小さなおもちゃを子どもに渡すと、子どもは僕が聞いたことのない歌を歌いながら飛び跳ねて、タープの下から出ていった。

男の人が僕を見て、ゆっくりと近づいてきた。少し怖かった。

ポケットに手を入れると透明なガラスかアクリルで作られたようなマウスピースを取り出して静かに吹いた。高い音がして、それはいつの間にかメロディになっていた。

男の人がマウスピースから唇を離した。マウスピースと唇のあいだに唾液が透明な糸をひいて、僕は少し汚いと思った。男の人は、それをそのまま僕に渡した。

僕はマウスピースをシャツの裾で拭って唇にあてた。吹いた。

スーッという掠れた音がした。

男の人が何か喋った。

それほど低くない静かな声だった。

外国の言葉だったけれど、それは吹き方が違うという意味だった。

僕がマウスピースを返すと、男の人は唾液を垂らしてマウスピースの穴から注いだ。

もう一度マウスピースを手渡された僕は、今度は唾液を拭わずに唇にあてた。

真ん中をゆっくりと吹くと、男の人が「端っこを吹いてごらん」と言った。

外国の言葉だったけれど、僕はそれを理解した。

左側にゆっくりと息を吹き込んだ。

ポーッという音と一緒に、3、4人の子どもたちが現れて、クルクルと円を描いて走り始めた。一人は一輪車に乗っていた。

吹くのを止めると、子どもたちはスッと消えた。

右側を吹いた。

今度は車座に膝を抱えて座った子どもたちが現れた。

吹き込む息を強くしていくと、一人、また一人と僕に気づいて、そのうちの一人が僕を指差した。何か話しているけれど、あまり楽しそうではなかった。

男の人が、今度は真ん中を強く吹きながら、ゆっくりとマウスピースを引き出してごらんと外国の言葉で言った。

言われた通りにすると、また子どもたちが現れた。

子どもたちはみんな楽しそうに笑っていたけれど、僕がマウスピースをゆっくり引き出すと、途端に表情が曇った。そのうちの一人か二人は、泣きそうな笑顔で僕に手を振っていた。

マウスピースが唇から離れると、子どもたちはまたスーッと消えた。

左、右、真ん中と順に吹いて現れた子どもたちの様子を、僕も外国の言葉でつっかえながら男の人に話した。

男の人は満足そうに微笑むと、僕から受け取ったマウスピースをポケットにしまった。

僕の頭を撫でると、少し大きな声で僕と遊んでいた子どもの名前を呼んだ。子どもの名前は「種子」のような意味の言葉だった。

子どもが走ってくると、男の人はしゃがんで抱きかかえた。

男の人は現れた時よりもずっと大きくなっていて、頭がタープにめり込んでいた。

二人は外国の言葉で僕に話した。

僕は彼らがさようならと言っているのがわかったけれど、僕には発音が難しい言葉だったから、僕は僕の言葉でさようならと言った。

彼らがタープの下から出ていったあとは砂埃が舞っていて、少し咳をした。